就職活動を終え、SIerから内定が出ている大学生の方からよく聞かれる質問が『プログラミングって学生の内から勉強しておいた方がよいですか?』です。新しいステージに向けて準備を進める中で、疑問に思うことも多いでしょう。
結論から言えば、必須ではありませんが、Pythonだけは触れておくことをおすすめします。
理由はSIerの業務の8~9割はプログラミング以外(要件定義、設計、テストなど)が占めており、コーディングスキルは入社後の研修でも十分習得できるためです。ただし、AI・機械学習分野に興味がある方や、周囲より一歩リードしたい方はPythonの基礎学習が将来的に大きなアドバンテージになります。
そのため、この記事では現役SEの筆者が以下の内容を解説します。
この記事で分かること
- SIer業務におけるプログラミングの実際の比重
- 内定者が学ぶべきプログラミング言語(結論:Python)
- Pythonをおすすめする3つの理由
- プログラミングより優先すべき勉強(資格など)
Contents
内定者がプログラミングを勉強する前にSIerの業務をおさらい
内定者がプログラミング学習の必要性を判断する前に、まずSIer業務の実態を正しく理解しましょう。
SIerの主な業務内容は企業や組織が必要とする情報システムを設計、開発、導入、運用することです。プログラミング(コーディング)はその一部に過ぎず、以下のような多岐にわたる業務が求められます。
- 要件定義:顧客の課題をヒアリングし、システム要件を明確化
- 基本設計・詳細設計:システムの全体構造と詳細仕様を設計
- 製造(プログラミング):設計書をもとにコーディング
- テスト:システムが仕様通りに動作するか検証
- 運用保守:システムの安定稼働を支援
- プロジェクト管理:スケジュール、予算、人員の管理
そのため、SIerの内定者であれば業界の理解も進んでいるので、勘違いする方は少ないと思いますが、毎日プログラミングをしている訳ではありません。SIerのシステム開発の手法として、
- ウォーターフォールモデル
- アジャイル開発
の2つが挙げられることが多いです。最近ではアジャイル開発を取り入れるような企業も増えてきましたが、まだまだウォーターフォールモデルでの開発が基本的です。ウォーターフォールモデルは以下のような流れとなっています。

この開発でプログラミングをする工程は?と言うと『製造』と呼ばれる工程です。『実装』や『コーディング』と呼んでいる企業もありますが、業務内容はほとんど一緒です。
それでは実際にこの製造はプロジェクトにおいてどの程度時間が掛かるかと言うと、1,2割です。言い換えるとプロジェクトの中でも8,9割はプログラミング以外のことを行っています。
そのため、SIerではコーディングスキルよりも、業務フローを理解しシステム設計書に落とし込む能力や、関係者と円滑にコミュニケーションを取る能力の方が重視されます。
また、SIerの多くの社員は、ITスペシャリストよりもプロジェクトマネージャー(PM)を目指すキャリアパスを歩みます。
- PMになるために必要なのは、技術力よりもマネジメントスキル
- 最近はITスペシャリストを目指す人も増えているが、評価制度が未整備の企業が多い
- 高度な技術を持っていても適切に評価されない現状がある
最近ではITスペシャリストを目指す方もいますが、まだ評価制度が整っていない企業が多く、スペシャルな技術を持っていても、評価することができていない現状です。これはSIerの悪い部分でもあり、そのようなことに嫌気を指してweb系、特にGAFA企業に転職するような流れもあります。
多くのSIerは入社後に3ヶ月程度の充実した研修プログラムが用意されています。プログラミング未経験者でも、この研修で実務に必要なスキルを習得できるため、内定者の段階で焦って勉強する必要はありません。
SIer内定者が学ぶならPython一択!AI・機械学習分野で活躍のチャンス
前章で説明した通り、SIerではプログラミングスキルは必須ではありません。しかし、
- それでも何か学びたい
- 周囲より一歩リードしたい
という意欲的な内定者にはPythonの学習を強くおすすめします。それは近年、SIer業界ではAI・機械学習分野の人材需要が急速に高まっているからです。
AI・機械学習の開発で最も使われるプログラミング言語がPythonです。また、統計分野ではR言語も使われますが、汎用性と学習しやすさではPythonが圧倒的に優れています。
Pythonを学ぶメリットとしては
1. 入社後のキャリア選択肢が広がる
- AI・機械学習プロジェクトへのアサインチャンスが増える
- 社内の高度技術者育成プログラムに選ばれやすい
- 将来的にITスペシャリストとしてのキャリアも視野に入る
2. 業務自動化で即戦力になれる
- Excel操作の自動化(openpyxlライブラリ)
- データ集計・分析の効率化(pandasライブラリ)
- 日々の定型業務を自動化し、生産性向上に貢献
3. 他の言語習得の土台になる
- Pythonの基礎を理解すれば、Java、C#など他言語の習得も容易
- プログラミングの考え方(アルゴリズム、データ構造)が身につく
が挙げられます。将来的にAI領域や機械学習に関わりたいと考えている学生であれば、学生のうちにPythonの基礎を学んでおくことで、入社後に大きなチャンスを掴める可能性が高まります。
SIer内定者にPythonをおすすめする3つの理由
実際の機械学習に使用される言語は特にPythonがスタンダードとなっておりますので、もしプログラミング言語を勉強するのであれば、Pythonがおすすめです。
理由1:初心者でも挫折しにくい学びやすさ
Pythonはシンプルで読みやすい構文を持ち、初心者でも学びやすい言語です。直感的に理解しやすいため、プログラミングの基本的な考え方(変数、ループ、条件分岐など)を学ぶのに最適です。
理由2:SIer業務で実用性が高い
PythonはSIerの実務で以下のような場面で活用できます。
- Excel自動化:大量のデータ集計・グラフ作成
- データ分析:顧客データの傾向分析
- 業務自動化:定型レポート作成の自動化
- AI・機械学習:需要予測、画像認識システム
- Webスクレイピング:競合サービスの情報収集
特にExcel操作の自動化はSIerの日常業務で頻繁に発生するため、Pythonスキルがあると即戦力として評価されます。
理由3:豊富な学習リソースで独学しやすい
Pythonは世界中で広く使われているため、学習リソースが非常に充実しています。以下は無料で学べるPython学習リソースです。
- Progate:ブラウザ上でコードを書きながら学べる(初級は無料)
- PyQ(パイキュー):実務的な課題が豊富(一部有料)
- YouTube:「キノコード」「プログラミングチュートリアル」など
- 公式ドキュメント:Python.org(日本語版あり)
また、分からないことがあっても、Google検索やStack Overflowで日本語の解説記事が豊富に見つかります。
【まとめ】SIer内定者はプログラミングを勉強する必要はないが、強いて言えばPython!
最後にSIerの内定者としてプログラミングを勉強するかどうかについてまとめます。
まず一つ言うと内定者、学生の頃からプログラミング言語を勉強することは必須ではありません。それは、
- SIerの業務の8~9割はプログラミング以外
- 入社後の研修(3ヶ月程度)で実務に必要なスキルを習得できる
- それよりも幅広い知識と経験を積む方が重要
だからです。
実際に新人研修ではみっちり勉強できるような環境が整っている企業も多いです。いわゆるユーザー系SIerであれば、新人研修を3ヶ月間実施してから、部署に配属されるような企業も多いです。そのため、実務に必要なプログラミング言語の取得はこの研修中に取得することができます。
ただ、そんな中でも、もし学生のうちからプログラミング言語を勉強したいのであれば、Pythonがお勧めです。学びやすく、汎用性が高く、豊富なリソースが利用できるためです。また、今後伸びていくであろうAIの分野にも活かすことができます。
個人的にはプログラミング言語よりも基本情報技術者試験や資格系の勉強をしておいた方がはるかに有意義だと感じています。もちろん考え方は人それぞれですので、自分が決めた道を信じて物事にチャレンジしてみてください。










