内定が出てくると、どの企業に就職するべきか迷うものです。特に最近多い質問が、『事業会社のIT部門と大手SIerのどちらの方が良いのか』ということです。
私は事業会社のIT部門からユーザー系SIerに出向していることもあり、事業会社をおすすめしていますが、
NTTデータや日立、NECなどの大手SIerと事業会社のIT部門(ユーザー系SIerなどへの出向含む)はどちらが良いのか。
様々な観点から考察していきます。
Contents
事業会社のIT部門と大手SIerを比べる前に、今回の想定読者は?
大手SIerとか事業会社のIT部門って具体的にどんな企業?
大手SIerは、
- NTTデータ
- 日立
- NEC
- 富士通
- NRI
- CTC
などを想定しています。一方事業会社のIT部門とは、
- 第一生命(生命保険)
- みずほ銀行(銀行)
- 東京海上日動火災(損害保険)
- SMBC日興証券(証券)
と言った、金融系のIT部門を想定しています。このような金融系の会社はシステム子会社(ユーザー系SIer)を持っていますが、事業会社(親会社)としてもIT部門の人材を募集していることが多々あります。
今回の事業会社とはIT部門を良く募集している金融系を想定してお話します。メーカー等もあり得るかもしれませんが、その辺はご了承ください。また、あくまで金融系の事業会社を想定していますので、メーカー系などのIT部門では少し毛色が違うかもしれません。
事業会社のIT部門からユーザー系SIerに出向中の私が入社を決めたポイント!
まず入社を決める時に重視するポイントは就活前や就活中に決めておくべきです。
私が本音で重視していたポイントは、
- 給料
- 福利厚生
など待遇面を最重要視しました。
他社の仕事の経験をしていないため、比較はできませんが、個人的にはどのSIerも同じような仕事をしていると思っています。
例えば三菱UFJ銀行を例に出すと、銀行系のシステムに関わるのであれば、
- 銀行のIT部門(三菱UFJ)
- 銀行のユーザー系SIer(三菱UFJインフォメーションテクノロジー)
- 大手ベンダー(NTTデータ、NEC、富士通など)
- 外販ユーザー系SIer(NRI、SCSK、CTC、NITなど)
- メーカー系SIer(NECソリューションイノベーター、富士通エフサス、日立ソリューションズなど)
- 独立系SIer(TIS、富士ソフト、大塚商会など)
など様々な企業が関わっています。
まとめると、上流工程や下流工程など少し業務に違いはあるものの、どの会社も『銀行系のシステムに関わっている』ことには変わりありません。
これは生保系システム、損保系システム、証券系システム、鉄道システム等どのシステムも同じことが言えます。事業会社の事業内容(銀行や保険、証券、鉄道等)は異なりますが、事業会社のシステム開発をすることはどのSIerも共通しています。
つまり、私が就活生の頃は、結局システム開発に関わるのであれば、少しでも待遇(給料や福利厚生など)が良い企業に行きたいと考えていました。
ここに事業内容や業務内容はほとんど重視していません。とは言っても、上流工程に関われるような企業の方が、良い待遇な場合が多いです。
もちろん志望動機に、給料や福利厚生などの待遇などは使っていません。
- 銀行:1秒も止めてはいけない
- 生保:お客様の一生に関われる
- 損保:誰かの挑戦を支えられる
- 証券:0コンマ何秒を争う、攻めるシステム
のような『建前』の志望動機を使っていました。
大手SIerと事業会社のIT部門で給料はどれぐらい変わるのか?
どうせITに関わるのであれば少しでも給料が多い方が良いに決まっています。そのため、待遇(給料や福利厚生)を重視している就活生も多いでしょう。私もそうでした。
早速ですが、大手SIerと事業会社の給与水準を比較していきます。出世の早さによって給料に差がつきやすいと言った事情もあるかもしれませんが、今回は平均的な水準を紹介していきます。これらの情報は口コミサイトでもあるOpenWorkから持ってきました。
早速ですが、大手SIerの代表格でもあるNTTデータでは、以下のような賃金カーブを描きます。
- ~4年目:450~600万円
- 5年目~:600~800万円
- 10年目~:800~950万円
- 15年目~:1,000万円~
課長職となる15年目ぐらいから1,000万円を超えるようです。この水準はSIer業界の中でもトップクラスです。
同じようなSIerの中でも大手企業のNECでは以下のような給与水準です。
- ~4年目:450~600万円
- 5年目~:500~700万円
- 10年目~:650~800万円
- 15年目~:700~900万円
- 20年目~:900万円~
NECではNTTデータと異なり、おおよそ900万円程度で頭打ちな模様です。それ以上は部長職など重要なポストに就かないと難しそうです。
NECとい言えばSIerの中でもNTTデータや日立、富士通などと肩を並べるトップ4の国内ベンダー企業です。事業規模的に日立やNTTデータが頭一つ抜けており、その次に富士通とNECが君臨している印象です。
一方例えば損保業界で東京海上日動や三井住友海上、損保ジャパンに次ぐ第4位のあいおいニッセイ同和損害保険や、生命保険業界で日本生命や第一生命、かんぽ生命に次ぐ第4位の明治安田生命と言った企業では以下のような給与水準です。
- ~5年目:400~500万円
- 5年目~:600~800万円
- 10年目~:750~900万円
- 15年目~:1,000万円~
- ~5年目:300~550万円
- 5年目~:700~800万円
- 10年目~:750~900万円
- 15年目~:1,000万円~
このように業界第4位の企業でも事業会社であれば、平均的に15年目程度(35歳程度)で1,000万円に届きます。この水準はSIer業界最大手のNTTデータでも同じような賃金カーブですが、NECでは一回り給与水準が落ちます。
さらに、これが東京海上日動火災や日本生命、三菱UFJ銀行のような業界トップクラスの企業であれば、20歳台でも1,000万円に届くことも可能ですので、差は広がるばかりです。
大手SIerと事業会社のIT部門で福利厚生などの待遇はどれぐらい変わってくるのか?
給料では大手SIerよりも事業会社の方が良いことが分かりました。さらに給与には反映されにくいのが『借上社宅制度』です。
家賃補助は給料に入りますが、借上社宅は給料から天引きのため、給料として反映されません。例えば、家賃10万円の家に住む際に、住宅手当が5万円(/月)出る企業と、借り上げ社宅で5万円(/月)負担するので見かけ上同じですが、ここには大きな差があります。
なぜ家賃補助より借上社宅の方がお得なのか、詳細な解説は今回割愛しますが、
- 社会保険料や税金(所得税や住民税等)が安い
- 礼金や敷金も企業が負担する場合が多い
- 更新料も企業が負担する場合もある
- クリーニング代や修繕費を企業が負担する場合もある
などのように、家賃補助以上にお得感があります。
事業会社(金融機関など)は今でも全国転勤が当たり前のように根付いていますので、この借上社宅制度が充実しています。多くの企業では7,8割ほど企業が負担してくれるので、自己負担は2,3割ほどです。
一方SIer業界であれば家賃補助の企業が多いようです。NTTデータは独身6万円または4万円ほど、結婚後月7万円ほどが出ますが、富士通であれば30歳を超えると住宅手当が付かないようです。
つまり、
- SIerの多くは家賃補助が多い
- 事業会社(金融系)は借上社宅制度が多い
の傾向があります。家賃補助の場合、年収にも反映されますが、借上社宅の場合は年収には反映されないため、年収以上のリターンが得られています。
福利厚生は、家賃補助や借上社宅などの住宅関連だけではありませんが、この住宅関連の制度が一番と言って良いほどお金に差が出ます。そのため、住宅手当類を気にするのも重要だと考えています。
このようなことから、福利厚生も事業会社の方が優れていると考えられ、給料や福利厚生を重視したいのであれば、事業会社のIT部門がおすすめです。
大手SIerと事業会社のIT部門の仕事内容の違いは?
そもそも事業会社のIT部門と大手SIerの仕事はと言うと、以下のようなイメージです。
上記を言葉で簡単に言うと、事業会社と大手SIerの関係は以下の通りです。
- 事業会社:業務要件を出す側
- 大手SIer:業務要件をシステム化する側
事業会社には様々な業務課題があります。つまり、事業会社のIT部門ではITというよりも、業務要件をベンダーに出す意味合いが強いです。そのため、SEのような働き方を期待している方には合わないかもしれません。
一方で、大手SIerであれば業務要件を元にシステムに落とし込むような仕事です。とは言っても実情は、システムに落とし込むのは、その2次請け、3次請けの会社であり、大手SIerはスケジュール管理や要因調整などマネジメントが中心です。
ただ、注意してほしいのが、事業会社のIT部門採用でも、私のようにユーザー系SIerへの出向もあります。出向の場合は事業会社(親会社)の給与体系や福利厚生を享受できますので、ユーザー系SIerのプロパー社員よりも比較的良い待遇で働くことができます。
大手SIerと事業会社のIT部門ではリストラはないの?
基本的に大企業であれば労働組合があるため、リストラはないと思ってもらって大丈夫です。特に自動車業界や金融業界、電機メーカー業界は労働組合の力はめちゃくちゃ強いです。
春になると春闘という言葉を聞く機会も有るかと思いますが、自動車業界や金融業界は毎年のようにベア(ベースアップ)を要求しています。ベースアップとは簡単に言うと給料引き上げの要求です。例えば去年まで月給30万円だった社員は、評価関係なく一律31万円まで引き上げるように要求します。
しかしリストラはないものの、早期退職を募るようなことはあります。例えば、
富士通は19日、早期退職制度により3月末までに2850人を削減すると発表した。
引用:日経新聞(2019/2/19)
のように富士通でも早期退職を募っており、
NECは29日、45歳以上で勤続5年以上の従業員を対象に実施した希望退職に2170人が応募したと発表した。
引用:日経新聞(2018/11/29)
とNECでもありました。
富士通やNECはSIer事業以外にも、電機メーカーとしての一面も持っています。この早期退職者の中にSIer事業はほぼ含まれていませんが、企業としてこのように人員削減に乗り出していることは把握しておきたいです。
一方早期退職は大手SIerだけではなく、事業会社でも同様の人員削減があります。
三井住友フィナンシャルグループは2017年度から19年度までの3年間で、業務の削減量が当初計画の4千人分から5千人弱分に増える見通しとなった。~中略~
あわせて19年度までの3年間に、国内の人員数が自然減で4千人弱減る見込みとなった。引用:日経新聞(2019/5/22)
や、
損害保険ジャパン日本興亜が2020年度末までに、従業員数を17年度比で4000人程度減らす方針であることが24日、分かった。全体の約15%に相当する。ITを活用し、業務の効率化を進める。余った従業員は介護などを手掛けるグループ企業に配置転換し、新卒採用も抑える。希望退職者の募集は予定していない。
引用:時事ドットコムニュース(2019年06月24日)
のように、大手SIerのみならず、事業会社でもRPAなどの導入により人員を削減しています。早期退職を募る会社も、グループ企業に配置させる企業など様々ですが、一つ言えることは『人を減らそうとしている』ことです。
入社したら一生安泰の時代は終わりました。内定をもらうことがゴールではなく、スタートです。
まとめ:個人的には大手SIerよりも事業会社のIT部門の方がおすすめ!
ここで私重視していたポイントをおさらいします。それは、
- 給料
- 福利厚生
です。特にIT部門で働くのであれば、上司の差はあれども、コーポレート部門のため評価の差は付きにくいです。つまり、給料や待遇は平等に与えられる可能性が高いです。
一方で人の雰囲気や仕事内容は部署やグループによってガラッと変わります。人の雰囲気で入社を決めても、部署の人の雰囲気が合わない可能性もあります。仕事内容も配属によっては表に出るアプリ開発、システムの裏側を支えるインフラ(基盤)など真逆の可能性もあります。
そのため、私は差が付きにくい、誰でも平等な給料や福利厚生を重視しました。この給料や福利厚生は事業会社のIT部門の方が、良い傾向があります。
よって、個人的には大手SIerよりも、事業会社のIT部門に行くべきかと考えております。もちろん入社理由は人によって異なりますので、必ず行けと言っているわけではありません。
断言できるのは入社の基準(軸)を決めておくことが大切ということです。この軸に沿って自分はどちらを選ぶべきか決めるのが重要です。