SIer業界を志望している就活生の中でも、親会社の大規模なシステムに関われるユーザー系SIerに興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、様々な会社の説明会を聞いていると、ユーザー系SIerの中でも親会社のみならず、他の会社のシステムにも関わっている(外販を行っている)企業もあることが分かります。
そのようなことから、親会社のみのシステムに関わる内販のみの企業と、他社のシステムに関われる外販も行っている企業どちらが良いのか気になりますね。
これからユーザー系SIerで現役SEでもある私が、実際に働いてみて感じたメリットを解説していきます。
Contents
ユーザー系SIerの中でも内販のみ企業のメリット!
転勤が少ない
内販100%の企業は転勤がほとんどありません。例えば、
- 東京海上日動システムズ → 多摩(東京)
- 日本総研(JRI) → 大崎(東京)
- 日興システムソリューションズ → 鶴見(神奈川)
のように、多くの社員が勤務地が固定されています。ただし、親会社含むグループ会社への逆出向もあり、必ず転勤が無いわけではありません。
ずっと同じ会社で働く前提であれば、人生のライフプランを立てやすいです。例えば家の購入時には、このような転勤のない企業の方が買いやすいですね。
しかし、外販を行っているユーザー系SIerはこの通りではありません。なぜなら部署によっては客先常駐もあり得るからです。実際に私の働いているユーザー系SIerには、
- NRI(野村総合研究所)
- SCSK
- CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)
- 日鉄ソリューションズ
- ニッセイ情報テクノロジー など
のような、ユーザー系SIerの中でもトップクラスの企業から客先常駐として来ています。この他にもメーカー系SIerや独立系SIerの他、メーカー系本体からの客先常駐社員もいます。具体的には、
- IBM
- アクセンチュア
- アビームコンサルティング
- NEC
- 日立
- 富士通
- NTTデータ
のように超大手SIerの社員も存在します。つまり、外販を行っている企業であれば、どれだけ大企業でも『客先常駐がない』とは言い切れません。
労働環境が良いので、まったりゆったり働けきやすい
今の時代、
- 給料は生活できるレベルさえあれば良い
- 残業が少ない
- 有給休暇取得率が高い
- 産休、育休、時短勤務、復職のしやすさ
- 在宅勤務やテレワークの充実
を重視している就活生も多いのではないでしょうか。そういう意味では内販のみの方が充実しているケースが多いです。
確かにその通りで、正直大きな違いはありません。しかし、外販に関わると客先常駐もあります。外販の中の一つでもある客先常駐の場合は、なかなかテレワークや在宅勤務ができる環境が整っていません。
自社社員のみ在宅勤務(テレワーク)を可として、客先常駐社員は在宅勤務は不可と取り決めている企業も多数あります。実際にコロナウイルスの騒動でその傾向が浮き彫りとなりました。
コロナ禍でも「客先常駐」 IT技術者の在宅勤務阻む
引用:日経新聞
また、内販のみのユーザー系SIerは社外への成果や技術力が表に出にくいです。外販もあるユーザー系SIerであれば売上高や利益率を用いることができ、技術力の高さをアピールできます。
しかし、内販のみのユーザー系SIerだと売上高や利益などの概念がそもそも無く、技術力なんて社外には見えづらいため、アピールしにくいのが現状です。そのため、会社説明会では『働きやすい環境』をアピールしがちです。
- 残業時間の少なさ
- 有給休暇取得率
- 女性でも働きやすい環境(育休、産休、時短勤務など)
- 誰でも在宅勤務、テレワーク可能
- 新卒3年以内の離職率
などの業務以外(周辺の環境)を全面にアピールするして、いかに働きやすい環境が整っているのかを就活生に訴えかけます。
実際に私は内販100%の企業で働いていますが、めちゃくちゃ働きやすいです。
内販100%のユーザー系SIerはワークライフバランスが最高です。
時間があったので、去年の有給休暇取得日数を数えてみると、25日も取得していました。
部署にも依ると思いますが、マジで休みやすいです。— 現役SEヒロ@MARCH出身の就活ブログ (@hiro511833) April 27, 2020
有給休暇は月に1回はもちろんのこと、忙しくない時には毎週のように取得していました。テレワークなどもできますし、女性社員の育休産休はもちろん復帰も多く見受けられます。(男性の育休産休はまだ少ないのが現状です。)
そのような事から、内販100%の企業はまったり働きやすい環境と言っても良いでしょう。
ユーザー系SIerの中でも外販を行う企業のメリット
給料が比較的高い
外販と内販の大きな違いは、企業として利益を追求しているかどうかです。当たり前ですが、儲けている会社ほど給料が高い傾向があります。
内販100%のユーザー系SIer企業は利潤を追求していません。全て親会社(事業会社)の仕事しかないため、むしろ利益が出ることはあり得ません。
一方で外販も行っているユーザー系SIerは利益を追求しています。そのような利益は月給やボーナスとなって返ってきます。平均年収ではありますが、以下のような企業が高給取りとなっています。
- 野村総合研究所:1151万円
- 電通国際情報サービス:973万円
- オービック:851万円
- 日立製作所:850万円
- 日鉄ソリューションズ:835万円
- NTTデータ:812万円
- 大塚商会:806万円
- NEC:805万円
- 伊藤忠テクノソリューションズ:802万円
- 富士通:797万円
引用:en-courage
これらには独立系SIerやメーカー系SIerも含まれていますが、共通するのは自社システム以外の仕事も引き受けている(=外販)ことです。
別記事ですが、課長職程度でも年収1,000万円を超えるような企業は、外販を行っている企業しかありません。
そのため、給料を求めるのであれば、ユーザー系SIerであろうとも外販を行っていることは必須です。
技術力が付きやすい
SIer業界だと技術力が付きにくいと思われがちです。しかし、特に外販を行っている会社はそんなことはありません。なぜなら、技術を用いて新しい分野を切り開いているからです。
論より証拠。例えば、
NRI(野村総合研究所)
- AIでお客さまの声の可視化とコミュニケーション改善を図るソリューションを新生銀行に提供
- AIで多様な文書から情報を抽出して定型化するソリューション「Shingan」の販売を開始
- 三菱地所グループの統合人事システムをマルチクラウドで構築
- ドコモ・インサイトマーケティング、昼間人口ベースの富裕層エリアデータの提供を開始
CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)
- GPIFにインデックス情報を収集・分析するクラウド基盤を提供
- 損保ジャパンに自動音声対応ソリューションを提供
- Yahoo! JAPANのデータ分析基盤にオープンネットワーキング・ソリューションを提供
SCSK
- H2O.aiと販売代理店契約を締結~機械学習のモデル作成を自動化するAIプラットフォーム「H2O Driverless AI」~
- 日機装株式会社メディカル事業本部へフィールドエンジニアを支えるオールクラウド型の新システムを提供
- 株式会社キリウに向け「atWill Template」をベースとした生産管理システムを構築
- 株式会社ジェーシービーのIT統制活動支援を実施~Salesforce導入・利活用における最適化を実現し、営業支援システムをリリース~
のようにAIやクラウドなど新しい技術を用いて、様々な企業と提携しています。よくAIやRPA、IoT、クラウドと言われている技術は、このような外販企業から生まれやすいです。
また、ERPパッケージも
- みずほ情報総研:Galileopt NX-Plus
- SCSK:ProActive
- 兼松エレクトロニクス:THOMAS GLOBE
- 日鉄ソリューションズ:NSSOL X mcframe 7
のように、ユーザー系SIerでもパッケージソフトを作っています。よく、
と言っている人がいます。
しかしそれは半分本当、半分嘘です。私のように内販のみユーザー系SIerであれば、正直最低限のプログラミングができる程度しかできず、技術力があるとはあまり言えません。どちらかと言うとマネジメント寄りで、マネジメントのスキルは付きます。
一方、前述のようにERPパッケージを作成している方は確実に技術力が付きますし、AIやRPAと言った新技術に関わっている方もスキルが付くと言って良いでしょう。
【まとめ】ユーザー系SIerで内販と外販どちらを選ぶ前に就活の軸を決めておく!
ユーザー系SIerの中でも外販ありの企業と、内販のみ企業のそれぞれのメリットが分かったのではないでしょうか。実際に両方から内定が出たらどちらを選べば良いのか。
それは『自分の就活の軸と照らし合わせて、より一致する』方を選びましょう。会社に求めることは人それぞれです。
- 仕事のやりがい
- 給料
- 福利厚生
- 勤務地
- ワークライフバランス
- 組織の風土
など、何を重視しているのかは人によって異なります。もう一度、自分が会社に求めることを書き出して、どちらに当てはまるのか考えてみましょう。
個人的にはユーザー系SIerよりも、もう一歩踏み込んで親会社(事業会社)のIT・システム部門をおすすめします。