就活を進めると分かりますが、SIerの中にもユーザー系、メーカー系、独立系といった3種類に分けられます。
その中でも特にSES(客先常駐)がメインの企業は自社の職場で働くことなく、お客様の会社で働きます。契約形態が異なるので言い切れませんが、いわゆる派遣のようなイメージでしょう。
ご認識の通りで、ユーザー系以外(特に独立系)は他の会社に常駐するケースが多いです。確かに就活生にとって分かりにくい表記で、不誠実ですね。
ただ、あえて明記する必要もない?ので、私個人としては特に何とも…続きは質問箱へ #Peing #質問箱 https://t.co/RvUfCXxDgk
— 現役SEヒロ@MARCH出身の就活ブログ (@hiro511833) May 30, 2021
そのようなことから、特に客先常駐に良いイメージを持っていない就活生も多く、できれば避けたいと考えているでしょう。
そのため、今回はそのような客先常駐(SES)と呼ばれる企業の見分け方を説明していきます。
Contents
見分け方の前に、そもそもSES(客先常駐)とは何か?
そもそもSES(客先常駐)とは、就活生の皆さんはどのように理解していますでしょうか。
SESとは『System Engineering Service(システム・エンジニアリング・サービス)』の略です。システム開発における開発から保守・運用をする上で必ず人(エンジニア)が必要となってきます。そのような人(エンジニア)を必要な期間、企業に提供するサービスになります。
何を難しいこと言っているんだと思われる方。凄い簡単に言うと一般的な国民にイメージされている派遣のような形式です。厳密に言うと、契約体型が決まっているため、派遣とは少し違いますので、あくまでイメージとして捉えてください。
ちなみにSESと同列で語られるのが、客先常駐です。あまり違いはないため、就活生であれば『SES≒客先常駐』だと思ってもらって大丈夫です。
SES(客先常駐)の契約体型は基本的に準委任契約です。補足として準委任契約の他に、
- 派遣契約
- 請負契約
- 委任契約
のような契約方法があります。そのため、必ずしも『SES=劣悪な環境』というわけではありません。それは以下の記事で解説をしていますので、参考にしてみてください。
今回のSES(客先常駐)見分け方に、この派遣契約などの契約内容はそこまで重要ではありません。そのため、それぞれの契約内容の説明は割愛しますが、基本情報技術者試験では頻出問題ですので、興味がある方は調べてみてください。
そして就活生が気になるのが、就職する会社がSES(客先常駐)であった場合、働く場所はどこになるのか。自社ビルなのかお客様のビルなのか。
SESは客先常駐と言われているだけあって、入社した会社で働くことはほぼありません。基本的にはお客様の職場に常駐します。それはお客様が用意したビルのワンフロアなのか、またはプロパー社員の代わりとなって働くかは企業の大きさにもよります。
就活生が入社した会社に戻る(帰社)のは研修など一部の社内業務の時だけです。毎週、毎月のように定期的に帰社する社員もいれば、まったく帰社することのない社員もいます。
ちなみに給料は入社した会社から貰います。働く先のお客様社員がどれだけ高給取りでも、客先常駐社員には一切給料やボーナスには影響がありません。
- 例えば、Aさんは独立系B会社に入社。NTTデータに客先常駐
- Aさんは給料(ボーナス含む)を独立系B会社から貰うため、客先常駐先であるNTTデータの給料(ボーナス含む)がいくら高くても、Aさんには一切関係ない。
同様に福利厚生なども客先常駐に合わせることは滅多になく、入社した会社に準ずることが多いです。若干ややこしいですが、契約内容によっては、福利厚生は客先常駐先に則る場合があります。これはそこまで期待しない方が良いかと思います。
長くなりましたが、これからSESを見分けるポイントを紹介していきます。
【5つのポイント】SES(客先常駐)の見分け方は求人サイトのココをチェック!
勤務地がアバウトな表記となっているか?
ユーザー系SIerの場合は自社で働くことが基本ですので、勤務地は決まっています。例えばリクナビを見ると、以下のように明示されていることが多数です。
- 東京海上日動システムズ:多摩
- 三菱UFJインフォメーションテクノロジー:晴海、中野、多摩、京都、MUFGグループ会社拠点
- 日興システムソリューションズ:本社(横浜鶴見区)、東京(中央区新川)
しかし、SESは客先常駐ですので、プロジェクト毎に取引先の企業で働くことになります。
そのため、どこで働くかは配属されるまで分からず、配属後もプロジェクトが終われば違う場所(勤務地)になることもありますので、勤務地の詳細までは断言できません。
そのため、かなりアバウトな表記となっていることが多いです。特に以下のような表現の場合は注意が必要です。
- 東京23区内
- 東京都内
- 東京近郊
- 関東圏内
この中でも特に東京23区や東京都内と書かれていることが多いです。このような場合は客先常駐の可能性が高い、可能性があると思ってもらって大丈夫です。
勤務時間に注意書きがあるか?
勤務時間というのは、原則その会社によって決まっています。例えば8:00~17:00のような企業もあれば、9:00~17:00、8:30~17:00と様々です。
しかし、注意書きで『プロジェクトによって異なります』や『客先に準ずる』のような文言を書かれている場合は注意が必要です。
私が働いているユーザー系SIerでも何個か大きなプロジェクトが進んでいますが、プロジェクト毎に就業規則の勤務時間が変わるなんてことはあり得ません。
打ち合わせで朝早く出社したり、夜遅くまで残ることはありますが、これは残業です。就業規則での勤務時間が変わっている訳ではありません。
勤務地の説明でも挙げましたが、SESの会社はプロジェクトによって客先常駐する会社が変わります。A社のAプロジェクトが終わったら、次はB社のBプロジェクトに参画するようなイメージです。
例えばA社の始業時間は9:00からだったけど、B社では8:00からと言ったケースが出てくると思います。準委任契約の場合、厳密には自社の勤務時間に合わせますが、今のSIer業界では客先常駐の勤務時間に合わせなくてはいけない風潮があることは事実です。
これらは偽装請負などの法律違反に該当する恐れがあること、会社によっての契約内容も異なりますので、一概にここでは詳しく追求しませんが、『プロジェクトによって異なります』や『客先に準ずる』のような文言を書かれている場合は客先常駐の可能性が高いと思ってください。
面接回数が極端に少ないか?
よくSIer業界では『人材ではなく人財』や『人は宝』のようなフレーズを聞くかと思います。しかし、このような会社で面接回数がたった1回のみだとしたら、本当に人という点を見てくれているのでしょうか?
以下のような記載があると注意が必要です。
- 面接は1回だけ
- 1日で内定
特にSIer業界では、人手不足が挙げられており、どこの会社も人を欲しています。なりふり構わず採用している会社があるのも事実です。例えば独立系SIerの中でも大企業の富士ソフトは、2021年度入社の採用人数が677名だったようです。大量採用で有名だった金融系を凌駕する採用数です。
実際に私はこの富士ソフトの選考に進みましたが、説明会に参加した後、面接1回受けるだけで内定をもらえました。
また、一緒に仕事をしている富士ソフト社員に話を聞くと、プロジェクトによって会社や勤務地が変わると嘆いていました。もちろん、富士ソフトのような大企業であれば自社開発も行っていますので、一概に全員が全員当てはまるわけではありません。
ただ、私の経験上、選考がたった1回の会社や1日で内定を出すと宣言している企業は注意が必要です。客先常駐である可能性は大と思ってください。
取引先がSIer業界大手ばかりではないか?
私達の会社はIT業界の中でも大手企業と取引があります。のような文言を見たら注意が必要です。特に多いのが、
- IBM
- アクセンチュア
- NEC
- 富士通
- 日立
のような企業です。
学生の頃は私もそう思っていました。しかし、会社に入ると
- 日立の人のはずなのに独立系A社出身
- 富士通の人と話していると思ったら独立系B社出身
のような人がちらほらいます。つまり独立系A社、独立系B社のような方々は、大手企業の二次請負で客先常駐しているということになります。
そのような事例は下記で解説していますが、このような形態はワンフロア貸切型のパターンが多いです。
元々のSIerの存在意義としては、ユーザーの業務をシステムで支えることです。もう少し具体的に言うと、銀行をシステムで支える、生命保険をシステムで支える、証券をシステムで支えると言い換えたほうが分かりやすいでしょうか。
しかし、日立や富士通といった大手SIerと取引があるというということは、『SIer(日立、富士通)をシステムで支える』とよく分からないことになってしまいますね。
反対に取引企業に
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友海上火災保険
- 日興証券
- みずほ銀行
などのような事業会社が書いてあれば、1次請け企業(プライムベンダー)である可能性が高く、客先常駐となる可能性も低くなります。
ただし少なくなる可能性が高くなるだけで、1次請け企業だから客先常駐が必ず無いというわけではありません。これはNTTデータやNRIといった最大手だから客先常駐が無いわけではありません。どの企業でも外販に関わっている以上、客先常駐はあり得ます。
月一回の帰社日あり、毎年BBQのような記載があるか?
帰社(会社に帰る)と言っている時点でSES(客先常駐)は確定です。
客先常駐の場合は、取引先の企業で働くので『自分は誰のため、何のために働いているのか』と思い悩むことも増え、帰属意識が薄れてしまいます。
そのため、多くの企業では、『自分の働いている会社を、給料を貰っている会社を忘れないように』と帰社日を設けています。
実際に私は経験したことがないので何をしているのか分かりませんが、研修や面談、それとも飲み会なのか、何が行われいるのかさっぱり分かりません。
よくアルバイトで『アットホームな職場です』とか、『毎年BBQ開催』、『月1回の懇親会(飲み会)』などの言葉はブラックアルバイトだ。と聞いたことはありませんか?
同じように就職活動をしていても似ている言葉が聞こえてきます。社内イベントをアピールしてくる企業も注意した方が良いでしょう。しかし、『社内イベント=悪』だとは思っていませんので、そこは履き違えないようにお願いします。
SES(客先常駐)の見分け方は人事や先輩社員にも確認!効果的な質問を教えます
結局は求人サイトには都合の良いことしか載せません。もちろん嘘ではないもののグレーゾーンの書きっぷりもあります。
そのため、本当に会社を知るにはその企業の会社説明会、OB訪問で理解を深めましょう。実際に私はそのような生の情報を求めて、個別会社説明会に86社ほど参加していました。
その際、以下のような質問をすると、自社で働けるのか、客先常駐なのかがはっきり見えてきます。
- 自社で働いている方は何割(何人)いますか?
- 自社勤務の同期は何割(何人)いますか?
- 客先常駐の方は何割(何人)いますか?
- 客先常駐の同期は何割(何人)いますか?
- 自社勤務のSEはいますか?
- 自社勤務はコーポレート系(人事部、総務部など)のみですか?
- どのぐらいの頻度で勤務地が変わりますか?
- 今まで何回勤務地が変わりましたか?
もちろん客先常駐という言葉は使ってOKです。
このような質問は会社説明会で人事に聞いてもOKですし、座談会で出てきた先輩社員でもOKです。もちろんOB訪問などで聞くのも良いです。
しかし、会社の方だと気を使って、聞きたい質問も聞けないこともあります。そのような場合は、就活エージェントを頼ってみましょう。例えばレバテックルーキーであれば、IT業界に特化した就活エージェントのため、様々な情報を持っています。このような就活のプロを良い意味で使うのも一つの手です。
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内販100%のSIerであればSESを見分ける必要なし。客先常駐はほぼありえない
そもそも客先常駐が嫌な就活生は、SIerの中でも内販100%の企業や、比較的外販の割合が少ない企業を選択するべきです。
例えば、
- 三菱UFJインフォメーションテクノロジー
- 日本総研
- 東京海上日動システムズ
- MS&ADシステムズ
- SOMPOシステムズ
- 第一生命テクノクロス(第一生命情報システム)
- 日興システムソリューションズ
- JRシステム(鉄道情報システム)
などが内販のみ、または内販の割合が高い企業となっています。このような企業は基本的にユーザー系SIerです。
内販100%の企業であれば、ほぼ確実に自社ビルで働くと思ってもらって大丈夫でしょう。
ちなみにSIer業界に属している以上、外販に関わるような企業であれば、どんな企業でも客先常駐は有り得ます。それが、
- IBM
- 日立
- 富士通
- NEC
- NRI
- NTTデータ
のように業界大手でも関係ありません。大手に行けば行くほど自社開発となる可能性は高くなるかもしれませんが、客先常駐になる可能性もあることは理解しておいてください。
SES(客先常駐)の見分け方まとめ!求人サイトの特に5つを確認しよう
これまで説明してきたポイントをおさらいします。
- 勤務地がアバウトな表記となっているか?
- 勤務時間に注意書きがあるか?
- 面接回数が極端に少ないか?
- 取引先が業界大手ばかりではないか?
- 月一回の帰社日ありのような記載があるか?
上記5つのポイントのどれかに該当する企業はSES(客先常駐)の可能性がありますので、気をつけましょう。
そもそも、SES(客先常駐)になるのが嫌ならば基本的に独立系SIerを避けたほうが無難です。もちろん自社開発ができる優良独立系SIerも存在しますが、それは業界の中でも一握りです。
そのような苦労をするのであれば、個人的にはユーザー系SIerや社内SEを狙ったほうが良いでしょう。
ちなみにユーザー系SIerに入社、超大手企業に就職したからといって客先常駐が無いわけではありません。例えばユーザー系SIerでも外販を行っている会社やNECやIBMと言った超大手企業でもお客さんの会社で働くことはあります。
独立系SIerと比較すると、客先常駐の可能性が低いだけです。そこは誤解の無いようにお願いします。