就活を始めるとSIerなどのIT業界や、SEの職種に興味を持つ就活生が多いでしょう。
- 手に職(スキル)を付けたいから
- これからはITの時代だから
- 営業は嫌だから
などポジティブな意見、ネガティブな意見と理由は人それぞれです。そして会社説明会では
- 文系出身でも手厚いサポート
- プログラミング未経験者歓迎
などの謳い文句がありますが、
と、思っている就活生も多いでしょう。
「文系なのですが、IT系の企業に就職できるでしょうか?」という就活生からの質問に、いつも回答に困っている。何か良い回答は無いだろうか?
— omochi | 1on1ミーティング好きのキャリア占い師 (@omokawa_yasu) January 17, 2021
そこで今回は文系出身でもIT業界に就職できるのか、就職するのであれば、どのような企業がおすすめなのかを解説していきます。
併せて私はIT業界の中でもユーザー系SIerと呼ばれる企業でSEとして働いていますので、そこで感じたことを紹介していきます。
Contents
そもそもIT業界はどのような企業がある?文系の方でも分かりやすく紹介
就活生の中には『IT業界!』とひと括りにしている方も多いですが、実際はIT業界の中でも少し分かれています。私が考えるIT業界は、
- web
- SIer
- その他
の大きく3つに分けられます。その他は多くないので、実質web系とSIerの2つです。
例えば、web系であれば、
- サイバーエージェント
- メルカリ
- フェイスブック
- mixi
- マネーフォワード など
が代表的な企業です。凄いざっくりいうと、web上に私達一般人でも触れることのできるITサービスを開発、提供しています。(もちろん対企業に対して開発を行っている、企業の内部の開発を行っているweb系も存在します)
言い換えるとwebサイトを構築しているような感じでしょうか。メルカリとかマネーフォワードとかは一般消費者にもイメージしやすいですね。いわゆるBtoCが基本のマーケットです。
『IT業界の人って常にPCカタカタしてるんでしょ?』と思っている方は、このようなweb系をイメージしています。世間ではこんなイメージでしょうか。
引用:サイバーエージェントのスタンディングデスク事情
実際に働いたこと無いので断言はできませんが、web系で働いている知人からの話を聞く限り、やはりプログラミングすることが業務の基本のようです。
一方でSIerであれば、
- 日立製作所
- NEC
- 富士通
- NTTデータ
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- SCSK
- 野村総合研究所(NRI)
- 三菱UFJインフォメーションテクノロジー
- 東京海上日動システムズ
- 富士ソフト
などが挙げられます。これらは私達一般人に触れるシステムを開発すると言うよりも、企業で働いている方々のためにシステム開発しているようなイメージです。
銀行や商社などの事業会社から『こんな感じのシステム作って欲しい』という依頼を受けて(請負)、SIer企業はシステム開発を行います。
そのため、SIerと呼ばれる企業は基本的に自社のITサービスを開発するのではなく、他社のITサービス(システム)を開発します。つまり、
- web系:自社のITサービスを開発、提供(インターネットを通して一般人も使える)
- SIer:他社のITサービスを開発、提供(一般人ではなく、企業の人のみが使うシステムが基本)
のように、web系とSIerでは『使う人』が大きく異なります。もしweb系とSIer両方を志望するのであれば、志望動機の使い分けは意識したいです。
SIerはBtoBが基本であるため、一般人にはあまり知られていない企業が多く、就活をする前までは知らない企業ばかりでしょう。
例えば就活を始めるまでは、NECや富士通ってパソコンを作る会社だと思っていませんでしたか?私はそのように思っていました。しかし、就活を始めると意外とシステム開発に重点を置いており、主要事業もこのような情報サービスの提供となっています。企業のニュースリリースを見ておくと、他の就活生と差が付きます。
web系の企業の業務の中心はプログラミングですので、もちろんプログラミングスキルが求められます。一方でSIerの場合、プログラミングスキルはそこまで求められません。どのような能力が求められるのかは後述していきます。
ちなみに世の中ではweb系が持ち上げられ、SIerはオワコンと言われていますが、SIerにも良いところはありますよ。と、実際に現場で働いているSEから伝えておきます。
文系出身はIT業界の中でもweb系への就職は難しい?
私はweb系に所属したことがないため、SIerからweb系に転職した元同僚から聞いた話を踏まえて紹介します。
web系はプログラマーやエンジニアと分類されることが一般的です。つまり、プログラミングをすることが業務のメインです。
私はweb系のGMOインターネットを一時期志望していました。その採用担当と話した時に、『あまりプログラミング経験が無いですが、選考で不利になりますか?』と聞いたことがあります。答えとして、
- 情報系(プログラミング)の学生の方が有利は事実
- もちろん未経験でも熱量やポテンシャルがあれば採用
と言われました。これはGMOインターネットに限らず、メルカリやマネーフォワードなどの大手web系であっても、一般的に同様かと思われます。
このようなことから、一般的な文系出身者はweb系が少し不利になると考えています。もちろん入社後に勉強を頑張れば、理系出身者やプログラミングを専攻していた学生と差を縮められたり、逆転することは可能です。あくまで文系が不利なのは入社前の話です。
全てが全て当てはまるわけではありませんので、座談会やOB訪問などで、『文系出身者で活躍している社員はいるか?』などを聞いてみるとその企業の特徴が分かるかもしれません。
または、スカウト型就活サイトに登録し、オファーを貰うのも一つの手です。このようなスカウト型就活サイトに登録しているweb系企業は多いですので、登録することで有利に進められます。
例えばdodaキャンパスは業界最大級のスカウト型サイトです。中小企業のみならず大手web系企業も登録していますので、オファーが貰えるチャンスが増大します。
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SIerであれば文系出身でもIT業界に就職できる?
多くのSIer企業は文系出身者も求めています。間違いなく文系でも就職することができますし、就職することに違和感はありません。
実際に私が働いているユーザー系SIerの社員の多くも文系社員です。おそらく半数の社員は文系出身です。
しかし、一つ注意して欲しいのがSIerの中でも
- メーカー系
- ユーザー系
- 独立系
と、3種類あることです。どのSIerにも文系出身が入れる訳ではなくこれら3種類は少し特徴が異なりますので、それぞれ説明していきます。そもそもこの3種類について知らない方は、以下の記事を参考にしてください。SIer初心者向けに優しく解説しています。
ユーザー系SIer
文系出身者の中でも多く占めるのが、このユーザー系SIerです。事業会社のIT部門(情報システム部門)が独立した形で会社が存在しています。
ユーザー系SIerの業務の特徴は、親会社(事業会社)の業務フローを理解した上で、システム(IT)に落とし込みます。会社説明会の頻出単語でもあるウォーターフォールモデルって聞いたことあるでしょうか。
ユーザー系SIerが担う工程は上記の
- 要件定義
- 基本設計
- 総合テスト など
と言われています。特に上2つの工程で業務をシステム化するべく設計書を作成していきます。
そして、その後の内部設計工程や製造(プログラミング)、テスト工程はパートナー会社に委託し、ユーザー系SIer社員はスケジュール管理やテスト計画や結果をレビューするマネジメントに重きを置きます。
つまり、ユーザー系SIerに所属している社員はプログラミングする機会がそこまで多くありません。もちろんプロジェクトや案件によっては、ベンダー会社に依頼せず、自社のみ内製としてプログラミングを行う場合もありますので、必ずしもプログラミングしない訳ではありません。
そのようなことから、プログラミングができる即戦力の理系学生を求めているのではなく、マネジメントができるような学生が好まれます。
マネジメントと言うとチームワークが少し似ています。学生時代にチームで関わったことを、自己PRや学生時代頑張ったことに組み込めると尚良いです。むしろSIerの面接ではこの『チームで成し遂げたこと』を十中八九聞かれますので、対策は必須です。
実際に、ユーザー系SIerの中でも人気企業の東京海上日動システムズでは、文理比が7:3と文系社員の方が多い結果となっています。
本音で語る文理対談
意外に思う人も多いかもしれませんが、システムズ社員は文系7:理系3と文系出身者の方が多いのです。では、システムズに必要な素養とは?現在活躍する文系&理系出身の2人に本音で仕事についてのアレコレを語ってもらいました。その話の中で見えてきたのは「コミュニケーション力」「創造力」「行動力」という3つのキーワードでした…。
また、同業他社のMS&ADシステムズでも、2022年度新卒採用者数51人に対して、
- 文系が40人
- 理系が11人
と文系出身者が大きく引き離しています。(引用:MS&ADシステムズ 雇用の状況)
JR東日本情報システムでは、上記の損保系SIerと比較すると少し文系出身者が劣りますが、それでも1/4ほど占めています。
このようなことから、ユーザー系SIerであれば文系出身であることは、弱みではありません。文系出身者も一定の割合を占めていることから、文系出身者を求めている企業も存在します。
ただし、入社後はプログラミングの基礎や国家資格でもある
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- その先の高度情報処理技術者試験
- AWSなどのベンダー資格
など、常に勉強する必要があります。資格取得を役職(課長、係長、主任など)の昇格要件としている企業もありますので、入社後も勉強が続くと思ってください。その覚悟は必要です。
勉強嫌いの方はそもそもSIerに限らずweb系への就職は難しいです。選考前や入社前には入門レベルの基本情報技術者試験の参考書をパラパラ見ておき、ITアレルギーがないか確認しておくことをおすすめします。
ちなみにユーザー系SIerではなくても事業会社(親会社)のIT部門という選択肢もあります。大企業でユーザー系SIerを子会社として持っている企業であれば、事業会社からユーザー系SIerへの出向コースもあります。
プログラミングなどのITスキルは大学の必修講義で1年間かじった程度の私でしたが、この出向コースで入社することができました。
ちなみにドラマ半沢直樹の影響で出向は悪や左遷と思っている方も多いかもしれませんが、まったく悪いことではありません。ご心配なく。中には左遷の意味合いの出向もありますが、どの企業もユーザー系SIerへの出向はそのような意味で捉えられていないでしょう。(むしろ羨ましがられることも)
メーカー系SIer
ユーザー系SIerと少し毛色が違うのが、このメーカー系SIerです。説明するまでもなく、メーカー系SIerはNECや富士通、日立などの総合電機メーカーのハードウェア、ソフトウェア開発部門などから独立した企業です。
そのため、前述のユーザー系SIerと異なり、メーカー系SIerは技術的な側面が強く感じられます。特にERP製品や組み込み系システムを扱う職場であれば、より理系チックであり、文系出身者は少し苦労するでしょう。
パッケージ製品のERPはメーカー系SIerや独立系SIerがメインです。反対にユーザー系SIerでERP製品を他社向けに販売している企業は少数です。
実際に私が就活生の時には、メーカー系SIerの中でも例えばNEC通信システムでは通信系や組み込み系に強みを持っているためからか、理系のみを募集していました。(今は全学部から募集となっています。)
もちろんERP(パッケージ開発)や組み込み系であれば、それなりのITスキルが必要ですが、いわゆるSESとなってしまえば話は別です。例えば金融系の基幹系システムの開発に関わるのであれば、ユーザー系SIerのようにそこまでの技術力は必要ありません。
ちなみにこのERP(パッケージ開発)に関わっていると、意外と転職に強いです。転職サイトに登録すると分かりますが、メーカー系のIT部門はこのようなERP経験者をよく募集しています。例えば某ビール会社や某食料品メーカーなど大手は見かけました。もし転職を意識するのであれば、
- AWSやAzureなどのクラウド
- システム基盤、インフラ系
- AIなど機械学習
- ERP
に関わることができれば、かなり幅は広がります。
文系理系出身者を調べてみようと思いましたが、公開している企業を見つけることができませんでした。しかし、インタビュー等では文系出身者もいましたし、少しずつ増えているような記事もありました。
ここまでまとめると、メーカー系SIerへ入社している文系出身者は増えていますが、それでもユーザー系や独立系と比較すると、まだまだ少数です。個人的には文系であれば、あまりおすすめできませんし、内定もユーザー系と比較すると難しそうです。
独立系SIer
ユーザー系やメーカー系など親会社(事業会社)を持たないのが独立系SIerです。代表的な企業は
- TIS
- 富士ソフト
- 大塚商会
- 都築電気
などが挙げられます。メーカー系SIerでも少し触れましたが、独立系SIerでもERPなどを開発している企業があります。
ただ、SIerの中でも9割以上が独立系SIerです。そしてERPなどのパッケージ開発を行っているような企業はごく一部です。自社開発できるような優良企業であれば良いですが、独立系の多くはSES(客先常駐)となっています。
そのため、とにかく人が必要で、文系理系に拘っている印象はあまりありません。例えば富士ソフトを例に出すと
- 2016年度入社 393名
- 2017年度入社 500名
- 2018年度入社 800名
- 2019年度入社 848名
- 2020年度入社 800名(予定)
と大量に採用しています。私が一緒に仕事をしている方も、文系出身や短大出身など様々です。
個人的な印象だと独立系SIerは文系出身でも入社することができます。しかし、超大手企業以外はそもそもの入社先としてあまりおすすめしません。
【まとめ】文系出身でもSIerならIT業界で問題なし!むしろおすすめします
ここまで読めば、
- 文系だけどIT業界に就職できるかな
- SEになれるかな?
と思っている方も、IT業界の中でも特にSIerであれば文系でも問題ないことが分かったのではないでしょうか。SIerではプログラミングというよりも、マネジメントがメインですので、文系も理系も関係ありません。
ただし、やはり文系となると面接対策はより必須です。特に
のような質問は頻出です。必ず自分の中で答えられるようにしておきましょう。ちなみに私は以下のように組み立てていました。
ここまでをまとめると、
- web系企業はプログラミングスキルが必須。熱量でカバーできるかもしれないけど、文系出身は基本的に就職が難しい。
- SIerであれば文系でも問題ない。特にユーザー系や独立系であれば大歓迎で、メーカー系は少し難しい。
と個人的には考えています。これらはあくまで一般的な大学生を想定しています。文系ながら在学中に興味を持ってプログラミングをしている学生もいますし、理系でも一切プログラミングしていない学生もいます。
そして大学で学んだ4年間よりも、入社後の40年間の方が遥かに長いです。理系は会社員生活のスタートダッシュを切れるかもしれませんが、40年という長い期間で考えると、文系出身でも逆転は十分に可能です。それどころか、配属後の評価として、『実は文系出身のA君の方が優秀だった!理系出身のB君は吸収が遅いね。』という事は普通に起こります。
学生時代何をしてきたのかも大事ですが、入社後に何をしたいかも同じぐらい大事です。自分の限界を考えず、視野を広げて就職活動をしてみください。
視野を広げるとなると、IT業界ではなくてもITに関わることができます。例えば事業会社のIT部門が挙げられます。IT未経験でもこのような部門に配属される可能性もありますので、興味があれば調べてみてください。